相続の対策として用いられるのが生きている間に資産を贈与する「生前贈与」です。
相続対策としての生前贈与の活用は一般的に行われています。
収益不動産の生前贈与
アパートやマンション等の収益物件から家賃収入がある場合、何もしないと現金として相続財産として蓄積されていきます。
これを相続人にあらかじめ所有権を移してしまうことによって、家賃収入が相続人にたまり、相続財産を圧縮して相続税が下がるだけでなく、プールした家賃収入を相続税支払いの原資として使えることになります。
アパートやマンションを贈与する場合は評価額が固定資産税評価額となり時価より低い価格で相続人に移ります。
そのうえ、借家権割合の分が評価減になることがあり、おおむね時価の40%で贈与することができます。
現金で贈与する場合に比べて節税効果が高いので、この性質を利用して現金を収益物件化して生前贈与をすることがあります。
暦年贈与を利用した生前贈与
一年の間に一人の個人に対し贈与しても贈与税がかからない一定の金額の枠があります。これを基礎控除といいます。
基礎控除の金額は110万円あり一年間の間に贈与した金額が110万円以下であれば贈与税をかけずに財産の移転が可能になります。
これを利用するのが暦年贈与です。
例えば妻と子ども2人いる場合はそれぞれ110万円の基礎控除の枠があるので、年間330万円の相続財産の移転が非課税でできます。
2年間に分けると660万円分、5年間に分けて不動産の持分を移転した場合は1650万円分の相続財産を非課税で相続人に移転できることになります。
この方法は収益不動産を移転させる場合にも使えますので、効果が倍増しますね。
また贈与税の計算は1月1日から12月31日までの1年間を単位としているので、12月に半分贈与をして、1月に残りの半分を贈与するといった使い方もできます。
ただし、暦年贈与は一年間に110万円までという制限があるので土地などの高額な財産を移転するためには長い期間が必要になります。また、相続前3年間の贈与が相続財産として相続税の計算に算入してしまうことに注意が必要です。
自分の意思で財産を分けるための生前贈与
生前贈与を利用する場合は自分の好きなように財産を分配することができます。
「それだったら遺言を書けばいい」
と思われるかもしれませんが、相続人全員が合意すれば遺言の割合と異なる分割協議も認められるのを知っていますか?
最近では自分で調べて遺言書を作る方も増えてきましたが、きちんとした専門家の関与がないために全く遺言の意思が反映されない場合も実務で多々見られます。
上記の場合は遺言執行者を選任したり、遺言書と異なる遺産分割を禁止する条項を付けておかなくてはなりませんね。
遺言書の内容を実現するのは想像以上に難しいものです。
ひとがよかったり、気の弱い相続人はいつも相続争いで泣きを見ます。
そういったことを防ぐために生前にあらかじめ財産を分けてしまうのが生前贈与です。
これならば確実に自分の意思を反映できます。
相続時精算課税という制度を使ったり、多額の贈与税を支払うための金融機関からの借り入れを検討する必要がでてくるかもしれません。
生前贈与を行う時の注意点
不動産の生前贈与をする場合には、
- 遺産分割時のトラブルとならないよう注意する
- 贈与税と相続税を比較検討する
- できれば贈与契約書に確定日付を取っておく
- 登録免許税と不動産取得税が高額になるので事前に検討する
- 相続開始前3年以内の相続人に対する贈与は相続財産として加算される
といった点に注意しなければなりません。
専門家以外がこの点を判断するのは難しいです。
生前贈与で何も検討せず自分たちで行ったため多額の贈与税がかかり慌てて相談に見えるお客様もいらっしゃいます。
生前贈与の活用を検討してみたいという方には、資産税・相続税に強い税理士と不動産の移転に強い司法書士のチームでご相談に当たらせて頂いております。
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