遺言書を書くなら一緒に検討すべき契約5つ
相続の対策として一番用いられているのが「遺言」です。
遺言を書くことによってあなたの死後、希望通りに財産の分配を行うことができようになります。
ただし、遺言書を書いただけで安心してはいけません。
本当に家族のためを思うのであれば生前の相続対策から死後の事務までをきちんと行わなければ片手落ちとなってしまいます。
いまだに相続が「争族」となってしまっているのは相続対策が不十分であることが原因です。
相続の専門家の視点から、遺言を書く際に同時に検討すべき契約事項について書いてみたいと思います。
この記事を読んで相続の対策に役立てて頂きたいと思います。
遺言と一緒に検討すべき契約
遺言と一緒に検討すべき契約は以下5つになります。
- 事務委任契約
- 任意後見契約
- 死後事務委任契約
- 民事信託契約(家族信託)
- 尊厳死宣言
遺言では主に財産の分け方について決めます。
しかし、あなたが亡くなった時の家族の負担は財産を分けるだけではありません。
葬式の準備をしたり、医療費施設利用費の精算をしたり、年金・介護保険等の各種届をおこなったりします。
また、亡くなる前に認知症になった場合にはあなたの看護、金銭・不動産等財産の管理があったり、死が迫ったりした場合には病院で重大な判断をしなければなりません。
相続に伴って発生する手間はあなたが思うよりずっと大変です。
こうした家族の負担を少しでも軽くする契約が上記の5つの契約等になります。
これらは全て遺言と一緒に公証役場で書面化することが可能ですので、本来相続対策を行うのであれば遺言と一緒に検討しなければならない事項です。
各契約について詳しく解説して行きます。
1.事務委任契約
事務委任契約はあなたが判断能力が十分ある状態の時に、家族に頼んでおきたいことを契約として結びます。
例えば、
- 介護施設に入る際の契約の代理
- 医療契約や入院契約の代理
- 賃貸アパートの管理
など財産の管理や契約の代理などを自由に定めることができます。
もちろん、そうした仕事をしてもらう対価として家族への報酬の設定も可能です。
あなたが高齢で自分でするのが面倒であったり、家族に任せた方が安心な業務は事務委任契約という形で規定することができます。
2.任意後見契約
任意後見契約はあなたが認知症などで判断能力が亡くなってしまった場合にあなたの代わりに財産の管理や契約の代理をしてもらう契約です。
認知症などで判断能力が亡くなってしまうと通常の契約行為ができなくなります。
そのときには、家庭裁判所からあなたの代わりに財産を管理する後見人という人が専任されるのですが、これはあなたや家族に希望が通るとは限りません。
現在では裁判所が家族を選んで財産の管理をさせることはすくなく、弁護士や司法書士といった資格者が専任されることが多いです。
ただ見ず知らずの人がいきなり来て財産の管理をされるので、家族と資格者の間で争いが起こったり、まれに資格者の横領などで財産を失う危険もあります。
あなたの判断能力がなくなった時に確実に信頼できる人に財産を管理してもらうには、任意後見契約をその人と結ぶ必要があります。
任意後見契約では
- 介護施設に入る際の契約の代理
- 不動産の管理、処分
- 生活資金の管理
などを定めることができます。
3.死後事務委任契約
死後事務委任契約は、あなたの死後の様々な手続きをあらかじめ頼んでおく契約です。
例えば
- 死後残ってしまった医療費や税金等の支払い
- 葬儀、埋葬、死亡届に関する業務
- 年金・介護保険の解約
- 身辺整理
などを報酬を支払って頼んでおくことができます。
報酬は遺産の中から払うことも可能です。
面倒な手続きは家族以外の専門家へ頼んでしまうのも有効です。
4.民事信託契約(家族信託)
民事信託契約は生前に財産の名義を家族に移して管理してもらう契約です。
予め名義を移すことによってあなたが認知症などになった場合でも、株を運用したり、不動産を活用したりすることができます。
また、贈与とは違いますので株の運用やアパートの家賃収入をあなたが受け取ることにしておけば贈与税のような税金が一切かかりません。
経営者の方であれば、自分の会社の株式を家族に信託しておけば、万が一自分が認知証になった場合でも会社の運営を止めることなく家族に代わりに行ってもらうことが可能です。
高齢な経営者には民事信託による対策は必須です。
5.尊厳死宣言
尊厳死宣言は、末期医療に関してあらかじめ家族にどうしてほしいのかを宣言しておくものになります。
こういったことも公証役場で書類を作成してもらうことが可能です。
例えば、あなたが苦しい思いをしてまで長生きしたくない場合、延命治療の費用で家族に迷惑を掛けたくない場合などに有効な書面になります。
医者はなかなか自分の判断で延命治療を止めることはできません。
こうした公的な書面をきちんと作っておくことで、あなたの希望通りの死を迎えることができるのです。
遺言書だけでは相続対策として不十分
あなたは相続について上記のようなことまで考えていたでしょうか?
相続ではあなたが気づかないリスクがたくさんあります。
遺言書を作るのであれば、様々なリスクにきちんと対処できるものを作成して頂きたいと思います。
1980年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、研究所研究員、プロギタリストを経て司法書士・行政書士として「司法書士・行政書士事務所 ローライト湘南」を運営。専門は法人設立、融資サポート、営業許可、不動産活用。法令知識と経験で企業の問題解決のコンサルティングを行ってます。
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